1-4 身体の不器用さと運動

スポーツ・柔道の指導者が発達障害を考えるとき、第1層(脳・神経)、第2層(身体)、第3層(交流)、と三つに分けて、運動の効果を考えると分かりやすい、という話をしました(第1回)。そして、第1層、脳・神経と運動について、前回ふれました。そこで、今回は、第2層の身体について触れていきたいと思います。

感覚過敏

第1回でのべたように、自閉症は「社会性の障害」と言われていましたが、最近の研究や当事者からの発表が増えるにつれて、身体に様々なトラブルがある、感覚過敏、があるから、社会性に支障をきたしている面がある、という側面が注目されています。

したがって、身体や感覚、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚、身体の使い方などに困難を抱えているのではないか、という視点が必要となります。

このとき理解しておくべき点は、感覚過敏を抱えている本人自身が、自分の感覚が他人とは違うということを自覚することが難しく、したがって、周りの人々にそれを伝えることが難しいという点です。例えば、本人がある特定の音に過敏なときでも、周りの人々がその音に過敏ではなかったりしますが、そのような違いが生じていることを本人も周りの人も自覚するのは難しいのです。

以下の動画は、自閉症のお子さんがどのように世界を感じているか、視覚、聴覚、呼吸(自律神経)などを表現したものです。

身体の不器用さ

この中でも、最近注目を集めているものが、身体の不器用さ、発達性協調運動障害(DCD)です。

ADSの80%、ADHDの50%、LDが50%にDCDが併存しているといわれています。

身体の不器用さの具体例

では、具体的には、身体の不器用さとはどのようなものなのでしょうか。その感じ方は多岐にわたりますが、以下、「発達障害と 「身体の動きにくさ」 の困難・ニーズ: 発達障害の本人調査から 髙橋智, 井戸綾香, 田部絢子, 石川衣紀, 内藤千尋 – 2014」 の論文に掲載されているケースを挙げます。

頭部
「5.口元が緩んでいるのをよく指摘される」26.3%,
「9.びっくりしたり, 緊張したり, 恥ずかしかったりしたときも, 固まるだけで感情を表に出すことができない」25.6%
「6.表情が乏しく, よい表情を作れない」22.6%,
「3.眼球が不器用で, 数行飛ばし読みをしてしまうことがよくある」22.6%
「8.内面の感情と表情は, 意識しなければ一致させることができない」17.3%

腹部
「16.腹筋が弱く, 腹筋運動ができない」19.5%,
「17.体幹の緊張不足で内臓下垂になり, 下腹がでている」12.8%

腰部
「25.何かに熱中すると姿勢に注意が回らなくなり, 姿勢がくずれてしまう」37.6%,
「19.ひどい猫背である」27.1%
「21.まっすぐに座れず, すぐ椅子にもたれかかってしまう」25.6%,
「24.姿勢を保つために力を入れすぎ, 大変な労力を使っている」20.3%,
「23.低緊張であり, 座っていても, 尻を前にずらす浅掛けになり,自然に上体が傾き, 脚が開いてしまう」18.0%

上肢
「31.精密さや細かさを要求される作業が苦手である」45.1%
「33.作業速度が遅く, 図工や家庭科では期限までに作品を仕上げるのが一苦労だった」42.9%
「55.鉛筆やお箸の持ち方がおかしいと指摘される」33.8%,
「44.字が斜め上がりになってしまって, 横まっすぐに書くことが難しい」31.6%

下肢
「110.足首や股関節がとても固い」21.1%
「101.目をつぶっての片足立ちができない」19.5%,
「88.道の何もないところでつまずいて転んでしまう」19.5%であった。
「81.歩くスピードがとても遅い」15.8%,
「105.スキップができない」13.5%,
「85.体をまっすぐにして歩くことができない」13.5%

体全体
「114.どこからどこまで自分の身体なのかつかみにくい」,
「126.ダンスは, 振付の覚えが悪く動作がぎこちないので, とても苦手である」36.8%
「125.ダンスや体操で, 先生の動きを真似するのがとても難しい」33.1%,
「127.自分は『できたつもり』でも, 他人から見ると本当の動きとは違う場合が多い」30.1%,
「151.リズミカルな動きを人や音楽と合わせることは至難の技である」27.1%

その他の項目
「169.右と左で違う運動ができない」19.5%
「171.右と左がよく分からない。急に言われると混乱する」18.8%,
「174.利き手の右手より左手の方が使いやすいときがある」15.0%,
「168.右と左を交互に動かす『クロスパターン』の動作がとても苦手」15.0%
「178.運動機能は日によって大きな差が出る」13.5%,
「167.左右の手足をバランスよく動かせない」13.5%

不器用さの影響、二次障害

発達障害は、第1層(脳・神経)、第2層(身体)、第3層(交流)という枠組みでみると理解しやすい旨をふれましたが、このような身体の不器用があると、第3層の人との交流に側面に大きな影響があることは明らかでしょう。あらゆる側面で、悪影響が出てきます。

みんなが長縄跳びで遊んでいるとき、ジャンプがうまくできない子供はその遊びに参加しないですし、みんなが水鉄砲で遊んでいるとき、指や手首がうまく使えず、水鉄砲に水を入れることが難しい子どもはその遊びに参加しようとしません。

人の交流してそこから学ぶ、という学習機会が減り、身体の不器用さだけにとどまらず、広範囲で発達の凸凹が生まれていくのです。

不器用さの改善

一般的には気づかれにくいといわれる身体の不器用さですが、スポーツ・柔道の指導者は、ある特定の動作がうまくできないことを気づくことが容易です。器用な子どもと不器用さがある子どもが同じ運動をしたら、その違いは一目瞭然だからです。

そして、ある特定の動きができなかった子どもたちが、その動きをできるようサポートする、こういったことが最も得意なのが柔道・スポーツの指導者です。お医者さん、看護師さん、福祉施設の職員さん、英語や数学の先生など、他の子ども達に関わる大人には難しいことです。したがって、運動・スポーツの指導者は、
第一に、身体の不器用さを改善することは、単にその競技がうまくなって試合で勝てるようになる、という範疇にとどまらない、その子どもの社会生活に広く影響を及ぼすものである、という理解をもつとともに、

第二に、中枢神経の発達不全(発達障害)が、身体の不器用さというカタチで表出しており、この身体の不器用さの改善を通じて、中枢神経の発達を促すことができるのであり、それを最も得意するのは、柔道スポーツの指導者である、という理解をもつことが大事なポイントとなります。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP