稽古の途中、泣きながら抜け出した男子(小学校中学年)

稽古の途中、泣きながらトイレに閉じこもってしまうなどの行動があった生徒(小学校中学年の男子)についての事例です。

背景

ここ十数年で何人か凸凹の生徒が入会したが、辞めていった生徒も多い。その原因はいろいろあるが、ほかの生徒と同じく指導する(ハンデを設定するなど特別な配慮をしない)、厳しく叱る、などがあったように思う。

生徒について

ホームページをみて入会した生徒(小学校中学年の男子)が、初日の稽古の途中、泣き出して道場の外に出たり、トイレに閉じこもるということが起きた。2回目の稽古のときもそのようなことがあった。本人は、のちに保護者から聞いたところによると、学校でも同様のことがあり、支援機関からは軽度のADHDの疑いがあるという指摘があったが、何からの支援を受けているわけではない。

実施した内容と結果

指導員Aが、本人と保護者へのヒアリングを行った。その結果、本人から、「大きな声で指導しないでほしい」、「できなくても無理にやらせないで欲しい」、「できないことは嫌になってしまう」、「一人でしばらく過ごすと落ち着く」という声をきいた。保護者からは、学校でも同様のことがあったこと、軽度のADHDの疑いがあること、支援機関から支援は受けていないことなどを聞いた。

そこで、指導員Aは、以下の二つの方針をたてた。

まず、本人を通常の稽古(集団の稽古)に無理に参加させず、道場の脇のほうで個別に指導することにした(指導員Aが個別の指導をしても、通常の稽古を担う他の指導員がいた)。そして、本人が、集団の稽古に入りたいというとき、その入りたいプログラムだけ参加できるようにした。

次に、他の指導員に対して、声を大きくして叱らない、むしろ、褒めるポイントを見つけて、褒めるようにすること、を依頼した。

その結果、

本人は徐々に集団の稽古に参加する割合が高くなり、1か月が経過すると、ほぼすべての稽古に参加できるようになった。

他の指導員は当初試行錯誤していたが、本人が集団の稽古に参加できないときどうしたらいいかを知り(そのときに叱らない、無理に参加させない、見守るなど)、また、本人を褒めたときに本人が喜んで集団の稽古の一部に参加した、などの指導上の成功体験を得たこともあり、指導員Aだけではなく、他の指導員も、無理に参加させない、叱るより褒める、というような対応をとることができるようになった。

チャレンジした点

指導者が本人や保護者と個別に面談をする、ということはこれまでやっていなかった。しかし今回実施して、本人の事情をよりよく知ることができたことがよかった。

無理に集団の稽古に参加しなくてもいい、という指導の方針は、おそらくこれまでなかったことで、今回が初めてだったかもしれない。この方針を他の指導員と了解するとき、本人や保護者と面談して得られた本人の状況(軽度のADHDの疑いがある、学校でも同様のことがあった)を共有したことが大きかった。本人のわがままで稽古に参加していないのではなく、やむを得ない事情で参加できないことが理解された部分が大きいのではないかと思う。

本人への「大きな声を出して指導しない」「強く叱らない」「できないときは無理に参加させず見守る」などという指導については、当初、他の指導員から、「柔道は武道であり、そのような甘すぎる指導は武道ではない。それでは子どもが成長しないのではないか」とか、「つらいとか、痛いとか、そういった経験をさせてあげたほうが本人のためだ」という意見があった。しかし、褒めて本人が喜んだら、これまでできなかったことが少しできるようになった、という指導上の成功経験ができたことなどもあって、次第にこのような意見は少なくなっていった。

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