発達障害の基礎知識と生徒とのかかわり方

生徒とのかかわり方

発達障害について

みなさんは、発達障害という言葉を聞いたことがあるでしょうか?近年では、発達障害に関するテレビ報道や特集もされるようになり、一般に広く知られるようになってきました。発達障害の説明の際に、よく出てくる言葉として「自閉症」「LD」「ADHD」などがあります。これから発達障害について一緒に学びましょう。

文部科学省が2012年に行った調査では、通常の学級にいる子どもの約6.5%に発達障害の疑いがあることもわかっています。知り合いの小学校の教師は「6.5%?もっと多いはずだよ」と言っていますし、私も低学年の場合は6.5%より多いように感じます。内訳としては、男子9.3%、女子3.6%となっています。知的な発達に遅れはないものの、学習面または行動面で著しい困難を示すとされる児童・生徒については、図★のようにまとめることができます。

文部科学省初等中等教育局特別支援教育課「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」(平成24年12月5日)より作成

では、地域の少年柔道スポーツ団などには、どれくらい発達障害のある子どもが在籍しているのでしょうか?詳しい調査はこれから行う予定です。今後、研究が進んでくれば、発達障害のある子どもが地域の柔道スポーツ団にどの程度在籍して柔道をしているのか明らかになってきます。
これからは、自閉スペクトラム症、ADHD(注意欠如・多動症)、LD(限局性学習症)について、その特徴を学んでいきましょう。

自閉スペクトラム症

「ぼ、ぼくは、おにぎりが好きなんだなあ」というセリフを聞いて、ドラマの一場面が思い出されるでしょうか?このフレーズは、画家の山下清さんをテーマにしたドラマでよく使われたものです。坊主頭にランニングシャツ、半ズボンをはいてリュックを背負って歩く姿を覚えている人も多いでしょう。1900年代後半は芦屋雁之助さん、2000年以降は「ドランクドラゴン」塚地武雅さん主演のドラマとして放映されていました。

この山下清さんですが、研究者によると実は自閉症だったという説が有力です。(総人口の約1%が自閉症と言われます)自閉症とは、人とのコミュニケーションや距離感などに障害があり、「こだわり」を持つことが知られています。著名な人物としては、山下清さん以外にも、例えば「万有引力」で有名なアイザックニュートンも自閉症であったと言われています。強烈な「こだわり」があったからこそ、アイザックニュートンも様々な研究成果を挙げられたのかもしれませんね。

近年では、自閉症のことを「自閉スペクトラム症」と呼ぶようになってきました。自閉スペクトラム症の「スペクトラム」とは「連続体」のことです。つまり、はっきりと自閉症とそうでない人は分けられないということを表しています。

ここで連続体について考えましょう。コップの中に半分程度の水が入っています。ここにオレンジジュースを一滴垂らしてみます。コップの中は「水」ですよね。それでは、10滴、11滴・・100滴と入れていきましょう。どの時点から「水」は「オレンジジュース」になるのでしょうか?「水」と「オレンジジュース」の明確な境目を引くことはとても難しいのです。これが連続体のイメージです(図★)。

人間に置き換えると、例えばコミュニケーションをとることが少し苦手な人を「コミュ障」と表現することがあります(「コミュ障は、正式な障害名ではありません」)。この「コミュ障」はコミュニケーションが苦手なため仕事や日常生活などに支障をきたしている人のことを表しています。この「コミュ障」と自閉症の人の「コミュニケーション障害」には、明確な境目を引くことができません。(もちろん、コミュ障といわれる人の中に、自閉症スペクトラム障害の人も一部含まれるでしょう。)自閉スペクトラム症の人は特別な存在ではなく、その他の人との連続体(スペクトラム)に位置しているということなのです。

自閉スペクトラム症の人は、パターン化された練習の場合は比較的無難に練習自体をこなすことはできます。ただ、身体や動きが固く、相手に合わせた運動や動きをすることが苦手であることが多いので、結果として柔道が弱いということにつながることもあります。ただ、「勝つ」ことにこだわるために、結果として周囲とトラブルになることはあるでしょう。また、知識が豊富で「柔道博士」の一面を持つ一方、興味が偏っており一方的に話し続けるため時に仲間から浮いた存在になることもあります。

また、自閉スペクトラム症の人の多くは、身体の感覚がとても過敏だったり鈍麻だったりする特性をもっています。そのため、柔道着の感覚が「痛い」ため必ず長袖Tシャツを着たり、足払いをキックと勘違いしたりしてトラブルになることもあります。また、聴覚が敏感なため道場内に声や太鼓の音などが響く場合は、思考が混乱してしまうこともあるでしょう。さらに「俺ルール」を作って周りに強要してしまうこともあります。

自閉スペクトラム症に関しての研究は1900年後半から急速に行われるようになり、支援に関する知見も蓄積されてきました。本書を通じて自閉スペクトラム症の人に対する支援のコツを学んでいきましょう。(余談ですが、自閉スペクトラム症の人の中で、特異的に優秀な能力を示す人のことをサヴァンと呼ぶこともあります。山下清さんも、絵の才能におけるサヴァンともいえるでしょう。)

参考文献
自閉症とサヴァンな人たち -自閉症にみられるさまざまな現象に関する考察(2014)石坂 好樹 星和書店
アスペルガーの偉人たち(2007)イアン ジェイムズ (著) 草薙ゆり (翻訳)  スペクトラム出版社

ADHD(注意欠如・多動症)

子どもは、基本的に注意が散漫で多動な存在です。「あっ、あそこにお菓子がある」「風船が見える」「このシールは何?」。いろいろなことに興味関心が向くことで結果として学習機会が増えることにつながっています。

一方で、同年代の子どもより明らかに落ち着きがない子どもがいます。例えば、落ち着いて座っていられない、すぐに走り出す、おしゃべりが止まらない、順番が待てないといった子どもです。これらの特徴は「多動性及び衝動性」と呼ばれます。

また、集中することが極めて苦手な子どももいます。例えば、よく「ぼーっと」している、物をなくしてしまう、話を聞いていないことが多いという特徴です。また、忘れ物が多かったり、物をすぐになくしてしまったりすることもあるかもしれません。この症状は「不注意」と呼ばれます。

そして、「多動性及び衝動性」もしくは「不注意」が幼少期から見られており、これらの特徴によって日常生活に支障がでてくるような場合、「ADHD(注意欠如・多動症)」と診断されることがあります。

柔道の場面でも、ADHDの子どもは目立ってしまうためによく怒られています。例えば、集まって技の解説を聞く時でも隣の子どもの柔道着を引っ張ったり、自分の柔道着の帯を触ったりして、最後まで話を聞いていません。その結果、技のポイントが分からず、周囲の子どもの様子を見て、何となく取り組み、最終的に先生に叱責されてしまうのです。

このような子ども達は、「分かっていてもしてしまう」ということがよくあります。先生の話を聞かなければいけない・・・とは分かっていても、つい空想をしてしまう。隣の友達についついちょっかいを出してしまうなどです。その結果、「分かっていたにもかかわらず」周りの大人から注意叱責を受けることが多くなります。

筆者の経験では、このように「多動性及び衝動性」や「不注意」のために注意叱責を受け続けた子どもたちは、成長するにつれて「闘争」や「逃走」の反応を示すことが多くなります。つまり、幼少期は周囲の大人には体力面で勝てないので怒られ続けられるのですが、体力が向上し精神的にも大人に近づくにつれて反抗したり、活動場面から逃げたりするのです。また、柔道自体を辞めてしまったり、怖くない先生には反抗したりするでしょう。

このADHDは、子どもの約5%に見られるといわれ、大人でも約2.5%が該当するといわれています。これほど身近なADHDですが、まだまだ理解や支援不足の面は否めません。これは柔道の指導においても同様でしょう。

LD(限局性学習症)

LDという言葉を聞いたことはありますか?LDとは、限局性学習症といわれるもので、文字を読んだり書いたりすることに時間がかかったり、算数の計算が苦手な子どもを診断する言葉です。LDは言語や文化によって異なるものの、5%~15%が該当するといわれています。想像以上に多いと思われた方もいらっしゃるでしょうか?
有名人では、トム・クルーズがLDであるといわれています。「トップガン」「ミッションインポッシブル」などで、世界中のファンを魅了する彼ですが、台本を読んで覚えることは難しく耳で聞いて覚えたというエピソードもあります。
トム・クルーズがアクションを華麗にこなすように、LDの人は外見からは障害が見えません。そのため、読んだり書いたりすることに支援が行き届かないことがあります。たとえ文字が読めたとしても、意味の理解までは難しい人も多いのです。そのため、人前で文字を読んだり書いたりする場面が来ないか常に「どきどき、ひやひや」していることも多いのです。
元プロ野球選手の新庄剛志さんは、LDの診断は受けていませんが、文字が読めないことを著書の中で明らかにしています。「僕は文字をきちんと読むことができない。読もうとすると文字が「もわーん」となって頭が混乱してしまう」ということです。
柔道においても、掲示や板書、プリントを読んで理解する機会は多いでしょう。例えば、技の説明をホワイトボードに書いたり、遠征試合の要項をプリントで配布したりするなどです。また、昇段審査の実技ではなく、筆記試験を恐怖に感じている人もいるということです。(保護者も我が子の障害を理解していて、相談してくるケースもあります)。
また、LDの中には運動を苦手とする子供も少なくありません。以前は、LDに運動の不器用さを含めるべきだと考えている人もいたようです。特に、複雑な動きになればなるほどぎこちない動きになる人も多いようです。次のページに発達性協調運動症について書いてありますので、そのページも併せてご覧ください。

参考文献
わいたこら。 ――人生を超ポジティブに生きる僕の方法(2018)新庄 剛志 学研プラス

発達性協調運動症

人はなぜ運動ができるのでしょうか?人の体は、骨や筋肉、関節などで構成されており、脳が調整しながら動かすことで、複雑な動きを連続して行うことができるのです。

例えば、縄跳びを考えてみましょう。ロープを回すためには、肩、肘、手首そして指などの関節と筋肉を連動させて、スムーズに回転運動を起こします。それとともに、身体全体の力を利用してスムーズにジャンプをします。縄跳びを考えてみても、身体の各所をスムーズに動かしているのが分かるのではないでしょうか。

発達性協調運動症は、身体の筋肉をスムーズに協調して運動することに困難を示すものです。決して運動自体ができないのではなく、身体を調整しながらスムーズに動かすことが困難であるということです。

例えば、ハサミを使って線の上を真っ直ぐに切ることができない、スキップを連続してすることが苦手、ボールをスムーズに投げられない/蹴れないなどがあります。手元などの細かい運動のことを微細運動、走るなどのダイナミックな動きのことを粗大運動といいます。

柔道の場面でもぎこちない動きやスムーズではない動きをする子どもがいます。柔道着の帯やズボンの紐をうまく結べない子ども。準備運動の「サイドステップ」や「ラダートレーニング」など、複雑なステップが苦手な子ども。寝技の時に、両手を別々に動かす返しを覚えられない子。背負い投げや払腰など、引き手や吊り手、左右の足の動きが別々の技をうまくまとめられない子など。特に片足になり相手を跳ね上げる、払い腰や大外刈りなどでつまづくことが多いような印象があります。二本背負い投げも苦手なようです。

長年、柔道の指導をしている先生であれば、少なくとも一人や二人はこのような子供に出会うでしょう。発達性協調運動症は、運動が全くできないわけではなく、時間をかければ一応できるため、周囲から見ると、怠けている、やる気が足りない、努力が足りないという姿に見えることも多いようです。「やればできる!」と言いたくなるでしょう。しかし、本人に発達性協調運動症があり、120%努力をしている場合はどうでしょうか。

ある研究によると、発達性協調運動症の子どもは他の子どもに比べて、体力自体が不十分な場合があるとの指摘があります。もし、自分が全力で頑張っていても、周囲から認められないばかりか、『努力不足』と言われ続けたらどうでしょうか?運動自体が、嫌になるのでしょう。

発達性協調運動症に関する研究は、これまで「不器用」などのキーワードで積み重ねられてきました。現在では驚くべき事実がわかってきています。発達性協調運動症は単に「運動が苦手」という範囲にとどまらず、自己肯定感や学業などにも悪影響を及ぼすというのです。例えば、発達性協調運動症の子どもは他の子どもに比べて不安感が高く、友達も作りにくく、学業も劣りやすい。思春期になると不登校など二次障害を起こしたり、成人後の就労などにも悪影響を及ぼしたりすることもあることが分かってきました。

この理由の一つに、運動が上手くできるかどうかは、周囲から分かりやすいことが挙げられます。周囲と比べてうまくできない、時に周囲から笑われてしまうことが繰り返されると、運動をしようとする気持ちが薄れるでしょう。この繰り返しにより、運動経験や技術の差が広がり、さらに運動が嫌いになるのです。

一方で、これまでの研究によって明るい事実も明らかになってきました。適切な支援のもとで運動をすることができれば、たとえ発達性協調運動症の子どもであっても、運動技術は向上し周囲との差が目立たなくなることもあるのです。たとえ、発達性協調運動症の子どもであっても、柔道を通して運動を楽しめる子どもを育てることができるのです。

発達障害という診断について

これまで、発達障害について説明をしてきました。発達障害は児童精神科医などの医師によって診断を受けます。その診断は、DSMやICDといった診断基準を使いますが、その中には各障害に特徴的な行動がピックアップされており、その項目と実際の様子がどの程度合致するのかということが重視されます。その他にも、実生活の様子や成育歴などを複合的に勘案し、診断を下すことが多いようです。

現在は、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)がよく使われていますが、この本は全部で861ページもあり厚さは4.5センチほどある分厚さです。発達障害は、その中の神経発達症群/神経発達障害群に含まれています。その中では、障害ごとに行動の特徴などがまとめられていますが、実際の子どもは複数の障害の特徴を併せ持つことも少なくありません。また、受診をした子供がすべて診断を受けるわけではなく、発達障害の特徴を濃く持っているもののいわゆるグレーゾーンな子どもとして経過を観察する場合もあります。

さらに、発達障害と診断がつくだけでは問題解決にはなりません。医師は診断や投薬などの医療側の支援をしてくれますが、実際の生活場面では周囲の大人が支援を実施することになります。支援をするためには、発達障害の特性をもつAくんをしっかり理解して実力+αを発揮できるようにするのです。発達障害という診断を受けることで、本人の努力不足や親のしつけの問題ではなく、本人の発達障害という特徴により困難なことがあるというスタートラインに立つことができるのです。

近年では、発達障害は固定的なものではなく、周囲の理解や支援によって変化することも知られるようになってきました。WHO(正解保健機関)は障害を説明するためにICF(国際生活機能分類)と呼ばれるものを提唱しています。これは、障害は本人に固定するものではなく、周囲の環境や支援によっても変わるというものです。

たとえば、自閉スペクトラム症のAくんは、稽古の途中に鳴らされるブザーの音が苦手です。突然大音量で鳴らされるので、驚いてパニックになります。この状態が続けば、Aくんはやがて柔道の練習に来なくなるでしょう。そこで、指導者は、ブザーが鳴る10秒前に「あと10秒」というようにしました。Aくんは、「10秒」という予測ができるのでびっくりしなくなりました。その結果、Aくんは落ち着いて練習に取り組めるようになったのです。

発達性協調運動症のBくんは、身体は大きいものの身体を器用に使うことが苦手です。例えば、大外刈りや払い腰など片足で跳ね上げる技をしようとすると、体がぐらぐらとして相手と一緒に倒れてしまいます。ここで、根性や気合を根拠に繰り返し叱責したら、Bくんは柔道が嫌いになってしまうでしょう。そこで、指導者無理に片足の技を教えるのではなく、両足で踏ん張ることのできる体落としをBくんに教えました。体落としの入り方も、一歩足を踏み出して相手を振り回すスタイルに替えました。その結果、Bくんは体の大きさを活かして、乱取りで相手を投げることができるようになり、今では一番に道場に来るようになっています。

このように、たとえ子どもが発達障害の特徴をもっていたとして、周囲の環境や指導を工夫することにより改善をすることができるのです。

特別支援教育の研究が進むにつれて、支援を考えるための方法も明らかになってきました。ここでは、海外でも広く使われている「応用行動分析」について紹介をします。

発達障害のある子どもへの支援(応用行動分析)

発達障害の子どもは、どの子も一人一人がとびっきり個性的です。残念ながら、水戸黄門の印籠のような、全ての子どもに当てはまるような支援ありませんが、全ての子どもの支援を考える際に使える方法があります。それが、応用行動分析と呼ばれるものです。

応用行動分析とは、望ましい行動を増やしたり問題となる行動を減らしたりするときに有効であるといわれています。特別支援教育の現場においては広く活用されており、その効果も研究的に実証されています。

次のようなケースを考えてみましょう。

たろうくんは、腕立て伏せが嫌いです。今から腕立て伏せをするよと言われると、友達にちょっかいを出して、先生に叱られています。そうしているうちに、腕立て伏せが終わってしまいました。このようなことは、これまでも繰り返されています。

行動は、行動をしたあとに望ましい結果が伴いことで維持されると考えられます。たろう君の場合、友達にちょっかいを出すことで結果として、腕立て伏せを回避することができています。一見すると、先生に注意をされているので望ましくないように見えるかもしれません。しかし、大切なのは行動の意味(機能)を理解することなのです。

応用行動分析は、行動の「前」にあったことや、行動の「後」に起こったことに注目し、それらを変えることによって行動自体を変えていこうとするものです。たろうくんがちょっかいを出す直前はどのような状況でしたか? たろうくんは、友達にちょっかいを出すことでどのようないいことがあったでしょうか?

ちなみに、子どもの問題行動を持続させる要因として「要求が通ること」「拒否が通ること」そして「注目されること」があるといわれています。たろうくんは、腕立て伏せの「拒否が通る」だけでなく指導者に「注目される」というダブルのメリットを得ていたのかもしれません。

それでは、どのように工夫をしていきましょうか?友達にちょっかいを出すという行動の前の状況と後の状況を変えていきます。

前の状況を変えるためには、どのような工夫ができるでしょうか?例えば
〇腕立て伏せの回数を少なくする
〇腕立て伏せではなく、腕立て伏せの動きを使ったゲームをする
〇腕立て伏せの時に帯をもってサポートすると伝える
〇ひざつきの腕立て伏せでもよいことを伝える。
などが考えられるでしょう。

次にあとの結果を変えていきましょう。たろう君の場合は、「腕立て伏せの拒否が通ること」「指導者の注目を得られること」が行動を維持する要因だと思われます。
そこで、
〇腕立て伏せが数回できているところで、称賛を入れる。
〇最後まで頑張った場合はこころからほめる。
〇「たろうくんのことを見ていたよ」と伝える。
等はいかがでしょうか?
友達にちょっかいを出して叱られるのではなく、腕立て伏せをがんばって認められる喜びを教えてあげましょう。

ほめ方のコツ

先ほど、ほめることが大切であると述べました。それでは、どのようにほめたらよいのでしょうか。それは、「本当に心からの褒める」ということです。子どもたちは、大人が思っている以上に大人のことを見ています。本当に褒めたのか、それとも言葉だけで褒めたのかを見抜いているかもしれません。

子どもをほめるためには、子どものことをよく知っていなければなりません。子どもは、いま何に挑戦しているのか、どの程度できているか、これまでどんな練習をしてきたのかを知っていないと、うわべだけの褒め方になるでしょう。

また、「結果」をほめるのではなく、「過程」をほめるようにしましょう。もし、柔道の試合で優勝したことをほめると、次に褒められるためにはまた優勝しないといけませんね。もし、強い子どもが出てきて優勝できなくなったらどうでしょうか?その子どもは褒められるポイントがなくなってしまいます。

そこで、「結果」ではなく、「過程」をほめるようにしましょう。例えば「背負い投げに入る前の、小内刈りのタイミングが良かった」と言われると、「次はもっともっとがんばってみよう」と思えるでしょう。

ちなみに、ほめるタイミングは、良いことを行った直後が望ましいといわれています。特別支援教育のプロの世界では、ほめるコツは<明確に><即座に><一貫して>そして望ましい行動に<随伴させて>であると言われています。大人の気分によって褒めたり褒めなかったりすることのないようにしたいものです。

人と比べるのではなく本人の頑張りに注目してみましょう。柔道は対人競技であり、さらに勝ち負けがはっきりとしていますので、どうしても人と比べがちになります。少しでもいいので、本人の頑張りに注目してもらえれば、柔道が好きな子どもが増えていることでしょう。

ほめるということについては、反論もあるかもしれません。たとえば、「厳しい指導によって心身が鍛えられ成長が促される」といった意見です。ここで「ほめると子どもはダメになる(榎本博明著)」を少し引用してみましょう。この本では、ほめることの弊害について指摘しています。
例えば、調子に乗る/自己チューになる/善悪の判断ができなくなる/打たれ弱くなる/挫折した時に落ち込みやすいなど、合計16の弊害です。

しかし、筆者はほめることを否定しているのではありません。「どういうときにほめるか、どのようにほめるか、ほめることと𠮟ることをどうするか」が大切であると指摘しています。そして、「能力」をほめるのではなく、「頑張り」をほめることで子供は成長しますと述べているのです。つまり、何でも適当にほめるのではなく、子どもの努力に対してほめることが大切なのです。優勝や勝利など結果ではなく、そこのプロセスの中で良さを認めてあげましょう。

一方で、本人のために叱った方が良い場面もあります。その時にもコツがあります。指導される理由についてポイントを絞って分かりやすく伝えることが大切です。人前で大きな声で叱るのではなく、個別の場面を作り落ち着いて諭すことも大切です。また、自分や人に危害が加わりそうな場面では、譲らないという指導法もあります。ある発達障害の子どもが、別の子どもの言動に腹を立てて殴りかかろうとしています。その時に周りの大人が大きな声で感情的に止めると、さらに火に油を注ぐことになりかねません。

そのようなときは、相手の子どもとの間に入り子供の手を握り、力を受け止めたうえで「暴力は許さない」という姿勢を貫くことが大切です。ここで大切なのは力づくで抑えるのではなく、相手の力をうまく逃がしながら「先生は怒らないけどここは譲りませんよ」というメッセージを伝えることです。

道場は日々いろいろなことが起こります。その時に、その場しのぎの対応をするのではなく、応用行動分析の考えを取り入れながら、うまくほめることを通じて子どもの成長を促していきましょう。

ケース1

それでは、ここで想定されるケースとその対応方法について考えてみましょう。
ケース1
小学2年生の女の子。技の説明をするために指導者の周囲に集めるものの、友達にちょっかいを出して話を聞いていない。そのため、よく指導者に起こられているものの、次に技を教える時にはまた友達と遊んで話を聞かない。
対応
技の説明をする前の工夫としては以下のようなものが考えられます。
〇友達と少し離れて座る 〇円ではなく子どもが見えるように横一列で座る 〇説明をした後実際に投げ込みをするという予告をする 〇教材や絵、文字を使う 〇女の子をモデルとしてみんなの前に立たせる
技の説明をした後には以下の工夫ができるでしょう。
〇実際に習った技の投げ込みをしてみる 〇「話をよく聞いていたから、できているね」とほめる 〇個別にもう一度技の確認をする

ケース2

小学校4年生の男の子。乱取りをしている時に、投げられるとムキになり相手をたたいたり蹴ったりしてします。個別に話をすると、「次はしません」と答えるものの、乱取りになると相手とのトラブルを起こしてしまう。
乱取りの前にできる工夫
〇乱取りで大切なのは、投げることではなく練習している技を試すことであるという価値づけを確認する。〇号令係に任命する(大きな声が出た時にはすかさずほめる)〇乱取りのポイントを伝える(引手の位置、足技の数など具体的に)〇乱取り自体の時間を短くする 〇年下の相手としながら教えるという役割を与える
乱取り後にできる工夫
〇乱取りの中でできたことを振り返る 〇投げたという結果ではなく、相手を動かそうとしたなどの過程をほめる 〇声が良く出ていたなどの具体的な行動をほめる 〇友達とトラブルを起こさなかったときは、その都度認めるような声掛けをする

ケース3

小学校6年生の女の子。「柔道着が痛い」といって、柔道着を着ることを嫌がることもある。また、乱取り中に相手が足払いをしてくると「蹴られた」といってすぐに泣く。
乱取り前にできる工夫
〇足払いは3回までなどのルールを決めて乱取りをする。〇燕返しを教える。〇足首にサポーターをつける。〇柔道着のズボンの下にジャージをはく 〇足払いを教える 〇休憩中に足を温めておく
乱取り後にできること
〇柔道ができたことを称賛する。〇少しだけスプレーをする 〇痛かったことではなく面白かったことに関心が行くように話題を向ける

大切なこと

少年柔道で大切なことは、生涯にわたって柔道を好きで続けてくれる人口を増やすことです。そのためには、様々な指導の工夫をすることが大切です。子どものことを知ったうえで、応用行動分析の考え方を取り入れる。そして、結果ではなくプロセスをほめることを通じて、子どもたちの心身の成長を促していきましょう。

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP